音楽の友 2018年9月号

Rondo より

フォルテピアノが大集合

小倉貴久子の「第1回 フォルテピアノ・アカデミーSACLA」

 フォルテピアノ奏者の小倉貴久子がプロデュースをする「フォルテピアノ・アカデミーSACLA」の第1回が、7月20日から3日間にわたり埼玉のプラザウエストで開催された。会場には、18世紀から19世紀までのさまざまなタイプの打弦鍵盤楽器が7台集められ、すべての楽器を間近で見学することができる。「7台の楽器を一堂に集めてのアカデミー開催は日本初の試み」と語る小倉は、自ら所蔵するヴァルターやクラヴィコードも会場に持ち込んだ。アカデミーでは、小倉によるコンサートや公開レッスンのほか、聴講生たちによる楽器の「体験コーナー」も設けられた。

 初日は、小倉による「オープニング・コンサート」で開幕。フォルテピアノのデュルケンとヴァルター、そしてクラヴィコードの計3台の楽器を使用し、1曲ずつ解説をしながら古典派の作品を演奏した。その後の公開レッスンでは、8人がレッスンを受講。はじめは、多くの受講生が、馴染みのないフォルテピアノを前に、思い通りの音で弾けないもどかしさを感じているようだったが、的確で丁寧なアドヴァイスのなされるレッスンを通じて、フォルテピアノならではのタッチ、楽曲ごとの特徴を踏まえたアーティキュレーションや細やかなニュアンスなどを実感していく様子が見て取れた。聴講生たちも熱心で、使用する楽器が変わるごとに見えやすい席に移動したり、レッスン内容をノートにぎっしり書き込んだりする姿が印象的だった。

「体験コーナー」では、聴講生のうち希望者が一人ずつ、小倉のアドヴァイスのもと、自分の弾きたい楽器の音を鳴らしていく。各楽器の音の違いを楽しんだり、音が鳴る瞬間のアクションに注目したりと、取り組み方もさまざま。体験している本人だけでなく、すべての聴講生が楽器の近くに集まって見学。レッスンの受講生ばかりでなく聴講生も講師と間近に接し、質問もできる、そうしたアットホームな雰囲気も、このアカデミーの魅力となっているように思われた。