第3回フォルテピアノ・アカデミー報告

2021年7月17日〜19日の3日間にわたり、さいたま市プラザウエストで第3回フォルテピアノ・アカデミーが開催されました。登場した楽器、期間中開催されたコンサートなどについて報告します。

日本を代表するフォルテピアノ奏者小倉貴久子がプロデュースするフォルテピアノ・アカデミー!

2021年7月17日(土)〜19日(月)*終了しました。

〜フォルテピアノにどっぷり浸る3日間〜

様々な種類の打弦鍵盤楽器が勢ぞろい!

レッスン、コンサート、ワークショップ、個人練習、体験コーナーも充実!


アカデミー報告集

第3回フォルテピアノ・アカデミー SACLA の報告動画


第3回に登場したフォルテピアノ たち

第3回 フォルテピアノ・アカデミー SACLAに持ち込まれた7台のフォルテピアノを紹介します。アカデミー・レッスン受講生は全ての楽器で練習ができました。聴講生向けの体験コーナーと小・中学生のためのワークショップでは試弾ができ、また会期中に開催されたコンサートに各楽器が登場しました!

A.ヴァルター

Anton Walter(1795年製の復元楽器 C.マーネ製作)F1~g3    

ウィーン式(跳ね上げ式)アクションのフォルテピアノ

ウィーン古典派の巨匠モーツァルトやベートーヴェンに支持されたフォルテピアノ。膝レバーによるダンパー解放装置と、弦とハンマーの間に薄い布を挟み込み音色を変化させるモデラートが付いている。ハンマーヘッドは鹿革で、鉄弦と真鍮弦(低音域)が木製のケースに弱い張力で張られている。軽いタッチ、明快な発音、倍音の豊かな音色が魅力。 

J.L.デュルケン

Johan Lodewijk Dulcken(1795年製の復元楽器 太田垣 至製作)5オクターブ    

ウィーン式(跳ね上げ式)アクションのフォルテピアノ

ウィーン古典派の巨匠モーツァルトやベートーヴェンに支持されたフォルテピアノ。膝レバーによるダンパー解放装置と、弦とハンマーの間に薄い布を挟み込み音色を変化させるモデラートが付いている。ハンマーヘッドは鹿革で、鉄弦と真鍮弦(低音域)が木製のケースに弱い張力で張られている。軽いタッチ、明快な発音、倍音の豊かな音色が魅力。   

B.クリストーフォリ

Bartolomeo Cristofori(1726年の復元楽器 久保田 彰製作)

ピアノの発明者クリストーフォリのピアノ。ハンマーで弦を打つ新楽器はGlavicembalo col piano e forte(弱音と強音をもつチェンバロ)と名付けられ、長い名前が短縮されて「フォルテピアノ」「ピアノ」という呼称になった。タッチによって強弱の変化や多彩な表現が可能となったクリストーフォリの発明は、現代のピアノへと継承されている基本的構造が多数。18世紀初頭のイタリアの作品は、クリストーフォリの音色によってその真価が輝く。


G.ジルバーマン

Gottfried Silbermann 1746年製(1746年 Freibergの復元楽器 久保田 彰製作2020年)F1~f3

 G.ジルバーマンはザクセン地方におけるオルガンづくりの名工でした。イタリアのクリストーフォリの発明を元にフォルテピアノの製作を始め、J.S.バッハからこの進取の楽器についての意見を仰ぎます。バッハは1747年にポツダムのフリードリヒ大王に謁見した際、改良されたジルバーマンのフォルテピアノを気に入り即興演奏をしています。

J.ブロードウッド

J.Broadwood & sons 製作のスクエア・ピアノ1814年製 F1~c4(太田垣 至 修復 2012年)

イギリスを代表する製作家。ハイドン、ベートーヴェン、クレメンティ、ショパンなどに愛用された。スクエアピアノは19世紀初頭のフォルテピアノ普及に大きく貢献。

クラヴィコード

Ch.G.Hubert(1770年代製の復元楽器 深町 研太製作)F1~f3

キーの後端についているタンジェント(真鍮片)が弦をたたいて音を出し、キーを押している間は弦を押し上げたままになるので、ヴィブラート(ベーブング)をかけることができる。絶対音量は小さいが、表現力の豊かな楽器。繊細なニュアンスを生む良いタッチ習得にも最適。


クラヴィシンバルム

打弦タイプのクラヴィシンバルム(久保田 彰製作)c~c3    

15世紀ズヴォレのアルノーの記述図を元に、詳細については久保田彰氏の想像と経験で補い製作した楽器。当時、本当に製作されていたとしたら、ピアノの最も古い祖先となる。



第3回会期中に行われたコンサート

会期中に7つの楽器を使用して有料、無料の計4つのコンサートが〈多目的ルーム〉で催されました。

親しみやすいトークつきコンサートで、一般の方にも身近にフォルテピアノを聴いて感じていただきました。

第1回  オープニング・コンサート

演奏:小倉貴久子

 クリストーフォリ、ジルバーマン、クラヴィコード、デュルケン、ヴァルター、スクエアピアノ、クラヴィシンバルムの7台の楽器を小倉貴久子が紹介・演奏するオープニングコンサート。

2021年7月17日(土)11:00~12:00

入場料:2,000円

使用楽器:A.ヴァルター、J.L.デュルケン、スクエアピアノ、B.クリストーフォリ、G.ジルバーマン、クラヴィコード、クラヴィシンバルム

演奏者プロフィール

【プログラム】

 

〔クラヴィシンバルム

〈ファエンツァ写本〉よりグローリア

 

〔B.クリストーフォリ〕

L.ジュスティーニ:チェンバロ・ディ・ピアノ・エ・フォルテすなわち、いわゆる小さなハンマー付きチェンバロのためのソナタ ト長調 作品1-7より

第2楽章 コレンテ・第3楽章 シチリアーナ

 

〔ジルバーマン〕

J.S.バッハ:アリアと種々の変奏[クラヴィーア練習曲集第4巻]《ゴールドベルク変奏曲》BWV988より

アリアと第13変奏

 

〔クラヴィコード〕

C.Ph.E.バッハ:ソナタ ホ長調 Wq.65-29 H.83より第2楽章

 

〔J.L.デュルケン〕

J.G.エッカルト:ソナタ 作品1-4

 

〔A.ヴァルター〕

L.v.ベートーヴェン:ソナタ ハ短調 作品13《悲愴》より第1楽章

 

〔スクエアピアノ〕

M.クレメンティ:ソナタ ト長調 作品40-1より第2楽章


(3)桐山建志 古典派ヴァイオリン作品の魅力

【特別ゲスト】演奏・お話:桐山建志

共演:小倉貴久子

 フォルテピアノとヴァイオリンが融合したり、丁々発止で渡り合うなど特別な世界を描く古典派作品を、様々な興味深い企画で話題を呼ぶ桐山建志によるお話と演奏でお楽しみいただく贅沢なひととき。

2021年7月18日(日)13:40~14:40

入場料:2,000円

使用フォルテピアノ:A.ヴァルター

演奏者プロフィール

【プログラム】

L.ボッケリーニ:ソナタ ト短調 作品5-5

W.A.モーツァルト:クラヴィーアとヴァイオリンのためのソナタ ホ短調 K.304

L.v.ベートーヴェン:クラヴィーアとヴァイオリンのためのソナタ ト長調 Op.30-3


(4)かげはら史帆 スペシャルトーク

お話:かげはら史帆

 初単著『ベートーヴェン捏造 ー 名プロデューサーは嘘をつく』で話題のライターかげはら史帆。ベートーヴェンと、ふたりの弟子リースとチェルニーとの関係性や、彼ら弟子が歩んだ三者三様のピアノ人生についてを、生き生きと現代に蘇らせるスペシャルトーク。(実演はありません)

2021年7月19日(月)12:20~13:00

入場料:1,000円

出演者プロフィール

師弟はなぜ「そのピアノ」を選んだのか?

ベートーヴェン、リース、チェルニー、三者三様のピアノ人生


(5)受講生コンサート

2021年7月19日(月)17:00~18:20

入場無料

使用楽器:ヴァルター・クリストーフォリ・ジルバーマン・スクエアピアノ

演奏:9人の全日程受講生

L.モーツァルト 1719-1787 : ナンネルの楽譜帳より第1、2番

 

F.シューベルト 1797-1828 : 楽興の時より 作品94-3

W.A.モーツァルト 1756-1791 : ソナタ イ長調 K.331第1楽章より

 

L.v.ベートーヴェン 1770-1827 : ソナタ ニ短調 作品31-2 「テンペスト」より 第1楽章

 

J.S.バッハ 1685-1750 : シンフォニア 第14番 変ロ長調 BWV800

W.A.モーツァルト : ソナタ ヘ長調 K.280より 第1楽章

 

W.A.モーツァルト : ソナタ 変ロ長調 K.333 (315c) より第1楽章

 

L.M.ジュスティーニ 1685-1743 : ソナタ 第10番 ヘ短調

 

M.クレメンティ 1752-1832 : ソナタ ヘ長調 作品13-6 第1、3楽章

 

J.S.バッハ : イギリス組曲 第3番 ト短調 BWV808よりプレリュード、アルマンド

 

L.v.ベートーヴェン : ソナタ 変イ長調 作品26より 第1楽章


小・中学生ワークショップ

9人の小・中学生にお集まりいただき、フォルテピアノについての小倉貴久子の説明、その後全ての楽器を少しずつ試弾するコーナーを設けました。

2021年7月18日(日)11:45〜12:45(受付は11:30から)

さいたま市プラザウエスト 多目的ルーム

定員:12名

参加費:1,000円(大人の方も同料金で聴講できます。大人の方同伴の未就学児は無料で見学可)

6台のけんばん楽器を紹介。じっさいに楽器に触れられるコーナーもあり楽しいですよ!

ピアノを習っている小・中学生の皆さまのふるってのごさんかをおまちしています。

 

モーツァルトやベートーヴェンがひいていたピアノって今のピアノとは全くちがう形をしていました。

中のしくみはやっぱり違うの?音はどんな音だったの?

このワークショップでさまざまなぎもんをなげかけてみて。

ピアノをならっていないおともだちでも音楽が好きな人はぜひ来てください。ピアノの歴史を研究してみよう!

 

〈ピアノの歴史〉をあらわした小倉貴久子(おぐらきくこ)がやさしく楽しくピアノの成り立ちとへんせんを演奏しながらかいせつします。

けんばんにふれられるチャンスもあるよ!