第6回フォルテピアノ・アカデミー報告

2024年7月12日にプレコンサート・13日〜15日の3日間にわたり、RaiBoC Hall(さいたま市民会館おおみや)で〈第6回フォルテピアノ・アカデミーSACLA〉が開催されました。登場した楽器、期間中開催されたイベントなどについて報告します。

フォルテピアノ奏者小倉貴久子がプロデュースするフォルテピアノ・アカデミー!

〜フォルテピアノにどっぷり浸る4日間〜

ゲスト講師に平井千絵さんと西野晟一朗さんを迎えての充実のレッスンに加え、ワークショップにレクチャーにと、盛りだくさんにお届けしました!

フォルテピアノ・アカデミーSACLAの最終回!

会場:RaiBoC Hall. さいたま市民会館おおみや〔小ホール、リハーサルルーム、レクリエーションルーム、スタジオ1,2,3,5,6〕

今回はゲスト講師に平井千絵さんと西野晟一朗さんを迎え、18世紀から19世紀初頭にかけての打弦鍵盤楽器を11台登場させました。イタリアでクリストーフォリによって発明されたピアノが、ドイツのジルバーマンに伝えられます。その弟子たちがイギリスに渡りスクエアピアノの製作を開始。産業革命の影響を受けてブロードウッドが新時代のフォルテピアノを生み出しました。かたやドイツではシュタインが別アクションによるフォルテピアノを発明し、ヴァルターに受け継がれていきます。常に作曲家たちの傍にあったクラヴィコードや、タンゲンテンフリューゲルなど、普段身近に触れることのできない鍵盤楽器が並ぶ豪華なアカデミー。レッスンやレクチャーに加えてワークショップなどのイベントも充実!

フォルテピアノの魅力にどっぷり浸る夢の4日間が無事終了しました。フォルテピアノ・アカデミーSACLA全6回が華やかに幕を閉じました。


アカデミー報告集

ムジカノーヴァ9月号の特集〈ピリオド楽器から考える古典派の奏法〉内に「フォルテピアノ・アカデミーSACLAを終えて」の記事が掲載されました!


第6回に登場した楽器たち

第6回フォルテピアノ・アカデミーSACLAには総計11台の鍵盤楽器が集いました。レッスンの行われたリハーサルルームにはジルバーマン、ヴァルター、スクエアピアノ。レクリエーションルームにはクリストーフォリとヴァルター。5部屋用意されたスタジオには、4台のクラヴィコード、シュタイン、タンゲンテンフリューゲルがおのおの配置されました。

アカデミー・レッスン受講生はこれらの楽器でレッスンを受け、練習もできました。聴講をお申し込みの方には〈体験ワークショプ〉を用意しました!

12日に開催されたプレコンサートにはクリストーフォリ、ジルバーマン、タンゲンテンフリューゲル、クラヴィコード、2台のヴァルターの計6台の打弦鍵盤楽器がステージ上に並びました。

B.クリストーフォリ

Bartolomeo Cristofori(1726年の復元楽器 久保田 彰製作)G1~e3

ピアノの発明者クリストーフォリのピアノ。ハンマーで弦を打つ新楽器はGlavicembalo col piano e forte(弱音と強音をもつチェンバロ)と名付けられ、長い名前が短縮されて「フォルテピアノ」「ピアノ」という呼称になった。タッチによって強弱の変化や多彩な表現が可能となったクリストーフォリの発明は、現代のピアノへと継承されている基本的構造が多数。18世紀初頭のイタリアの作品は、クリストーフォリの音色によってその真価が輝く。

G.ジルバーマン

Gottfried Silbermann 1746年製(1746年 Freibergの復元楽器 久保田 彰製作2020年)F1~f3

G.ジルバーマンはザクセン地方におけるオルガンづくりの名工でした。イタリアのクリストーフォリの発明を元にフォルテピアノの製作を始め、J.S.バッハからこの進取の楽器についての意見を仰ぎます。バッハは1747年にポツダムのフリードリヒ大王に謁見した際、改良されたジルバーマンのフォルテピアノを気に入り即興演奏をしています。

タンゲンテンフリューゲル

Tangentenflügel(Ch.G.Schröter考案のアクションによる復元楽器 久保田彰製作)G1~e3

タンゲンテンフリューゲルの発音の仕組みは、キーの後方の加速レバーにのった木片を飛ばして弦を打ち、自然落下させるというシンプルなもの。タッチによって強弱もつけられ美しい音色が魅力。モーツァルトがザルツブルク時代に弾いていたことでも知られる。


クラヴィコード

Cristian Gottlob Hubert(1770年代製の復元楽器 深町 研太製作)F1~f3

キーの後端についているタンジェント(真鍮片)が弦をたたいて音を出し、キーを押している間は弦を押し上げたままになるので、ヴィブラート(ベーブング)をかけることができる。絶対音量は小さいが、表現力の豊かな楽器。繊細なニュアンスを生む良いタッチ習得にも最適。

クラヴィコード

J.H.Silbermann(1775年製の復元楽器 太田垣 至製作)F1~f3

キーの後端についているタンジェント(真鍮片)が弦をたたいて音を出し、キーを押している間は弦を押し上げたままになるので、ヴィブラート(ベーブング)をかけることができる。絶対音量は小さいが、表現力の豊かな楽器。繊細なニュアンスを生む良いタッチ習得にも最適。

Cristian Gottlob Hubert(1784年製の復元楽器 原クラヴィーア工房製作)A1-e3

H.A.Hass(1744年製の復元楽器 原クラヴィーア工房製作)FF−f3

クラヴィコード

キーの後端についているタンジェント(真鍮片)が弦をたたいて音を出し、キーを押している間は弦を押し上げたままになるので、ヴィブラート(ベーブング)をかけることができる。絶対音量は小さいが、表現力の豊かな楽器。繊細なニュアンスを生む良いタッチ習得にも最適。


J.A.シュタイン

Johann Andreas Stein (ca.1788年製の復元楽器 ツッカーマン - 新井千笑製作)F1~f3

ウィーン式(跳ね上げ式)アクションのフォルテピアノ。

モーツァルトに支持されたフォルテピアノ。膝レバーによるダンパー解放装置と、弦とハンマーの間に薄い布を挟み込み音色を変化させるモデラート(手動)が付いている。ハンマーヘッドは2~4層の鹿革で、鉄弦と真鍮弦(低音域)が木製のケースに弱い張力で張られている。軽いタッチ、明快な発音、倍音の豊かな音色が魅力。

A.ヴァルター

Anton Walter(1795年製の復元楽器 C.マーネ製作)F1~g3

ウィーン式(跳ね上げ式)アクションのフォルテピアノ

ウィーン古典派の作曲家モーツァルトやベートーヴェンに支持されたフォルテピアノ。膝レバーによるダンパー解放装置と、弦とハンマーの間に薄い布を挟み込み音色を変化させるモデラートが付いている。ハンマーヘッドは鹿革で、鉄弦と真鍮弦(低音域)が木製のケースに弱い張力で張られている。軽いタッチ、明快な発音、倍音の豊かな音色が魅力。

A.ヴァルター

Anton Walter(1795年製の復元楽器 太田垣 至製作)F1~g3

ウィーン式(跳ね上げ式)アクションのフォルテピアノ

ウィーン古典派の作曲家モーツァルトやベートーヴェンに支持されたフォルテピアノ。膝レバーによるダンパー解放装置と、弦とハンマーの間に薄い布を挟み込み音色を変化させるモデラートが付いている。ハンマーヘッドは鹿革で、鉄弦と真鍮弦(低音域)が木製のケースに弱い張力で張られている。軽いタッチ、明快な発音、倍音の豊かな音色が魅力。 


J.ブロードウッド

J.Broadwood & sons 製作のスクエア・ピアノ1814年製 (太田垣 至 修復 2012年)F1~c4

イギリスを代表する製作家。ハイドン、ベートーヴェン、クレメンティ、ショパンなどに愛用された。スクエアピアノは19世紀初頭のフォルテピアノ普及に大きく貢献。



第6回会期中に行われたコンサートとレクチャー、ワークショップなど

会期中に一般の方に開かれたプレコンサートと、最終日には受講生コンサートが催されました。

また、受講生・聴講生を対象に、各講師によるレクチャーと、製作家久保田彰&太田垣至のスペシャルトーク。そして試弾コーナーのあるワークショップと〈通奏低音講座〉が開催されました。

プレコンサート 小倉貴久子・平井千絵・西野晟一朗

第6回フォルテピアノ・アカデミーSACLA プレコンサート

6台の鍵盤楽器によるガラコンサート

〜ピアノの発明者クリストーフォリ、バッハ親子と親密なジルバーマン、モーツァルトがウィーンで愛用したヴァルター、作曲家たちにファンタジーを与えたクラヴィコードとタンゲンテンフリューゲルによる18世紀鍵盤音楽史絵巻〜

2024年7月12日(金)18:30開演*終了しました。

RaiBoC Hall.(さいたま市民会館おおみや)小ホール

入場料:3,500円

使用楽器:クリストーフォリ、ジルバーマン、タンゲンテンフリューゲル、クラヴィコード、ヴァルター2台

【プログラム】

D.スカルラッティ:ソナタ ニ短調 K.1

L.ジュスティーニ:ソナタ ト長調 Op.1-7

C.P.E.バッハ:専門家と愛好者のためのクラヴィーア・ソナタ及びロンド 第2集 Wq. 56 よりロンド第2番 ニ長調 Wq. 56/3 H. 261、ロンド第3番 イ短調 Wq. 56/5 H. 262

D.ブクステフーデ: トッカータ ト長調 BuxWV165

J.S.バッハ: 平均律クラヴィーア曲集第2巻より プレリュードとフーガ ト長調BWV884

J.ハイドン:ソナタ ハ長調 Hob.XVI:48

W.A.モーツァルト:シンフォニー ト短調 K.550 第40番(2台編曲版)


小倉貴久子レクチャー《産業革命に沸くイギリスがベートーヴェンにもたらしたもの》

2024年7月13日(土)13:00〜14:00 リハーサルルーム*終了しました。

〜ロンドン・フォルテピアノ楽派の作品をとりあげながら〜 ブロードウッド製スクエア・ピアノ使用

平井千絵レクチャ《自由な演奏を求めて》

2024年7月15日(月)13:00〜14:00 リハサールルーム*終了しました。

〜アーティキュレーションの可能性 モーツァルト作品を中心に〜 ヴァルター使用



スペシャルトーク 久保田彰&太田垣至

2024年7月14日(日)13:00〜14:00 リハーサルルーム*終了しました。

〜工房開設40年を迎えた久保田彰に太田垣至がインタビュー〜


フォルテピアノ体験ワークショップ

2024年7月13日(土)〜15日(月) リハーサルルーム・レクリエーションルーム*終了しました。

〜小倉貴久子と平井千絵、西野晟一朗からタッチについてアドヴァイスを受けながら〜

クラヴィコードワークショップ

2024年7月13日(土)/14日(日) スタジオ1*終了しました。

〜西野晟一朗の指導を受けながらクラヴィコード体験&プチレッスン〜



西野晟一朗 レクチャー《通奏低音講座》

2024年7月15日(月) スタジオ1*終了しました。

〜音楽の基礎として大切な通奏低音を実演を交えながら解説〜 クラヴィコード使用


受講生コンサート

2024年7月15日(月)17:15〜19:40 リハーサルルーム*終了しました。

18人の受講生による成果を発表する、受講生コンサート