第1回フォルテピアノ・アカデミー報告

2018年7月20日〜22日の3日間にわたり、さいたま市プラザウエストで第1回フォルテピアノ・アカデミーが開催されました。登場した楽器、期間中開催されたコンサート、また〈音楽の友〉に掲載された記事などについて報告します。

日本を代表するフォルテピアノ奏者小倉貴久子がプロデュースするフォルテピアノ・アカデミー!

2018年7月20日(金)〜22日(日)*終了しました。

〜古典派時代のフォルテピアノにどっぷり浸る3日間〜

様々な種類の打弦鍵盤楽器が勢ぞろい!

レッスン、コンサート、個人練習、体験コーナーも充実!


アカデミー報告集

下記題字をクリックしてご覧ください!



第1回に登場したフォルテピアノたち

第1回 フォルテピアノ・アカデミー SACLAに持ち込まれた7台のフォルテピアノを紹介します。アカデミー・レッスン受講生は全ての楽器で練習ができました。聴講生向けの体験コーナーでは試弾ができ、また会期中に開催されたコンサートに各楽器が登場しました!

A.ヴァルター

Anton Walter(1795年製の復元楽器 C.マーネ製作)F1~g3    

ウィーン式(跳ね上げ式)アクションのフォルテピアノ

ウィーン古典派の作曲家モーツァルトやベートーヴェンに支持されたフォルテピアノ。膝レバーによるダンパー解放装置と、弦とハンマーの間に薄い布を挟み込み音色を変化させるモデラートが付いている。ハンマーヘッドは鹿革で、鉄弦と真鍮弦(低音域)が木製のケースに弱い張力で張られている。軽いタッチ、明快な発音、倍音の豊かな音色が魅力。    

J.L.デュルケン

Johan Lodewijk Dulcken(1795年製の復元楽器 太田垣至製作)5オクターブ

ウィーン式(跳ね上げ式)アクションのフォルテピアノ

ウィーン古典派の巨匠モーツァルトやベートーヴェンに支持されたフォルテピアノ。膝レバーによるダンパー解放装置と、弦とハンマーの間に薄い布を挟み込み音色を変化させるモデラートが付いている。ハンマーヘッドは鹿革で、鉄弦と真鍮弦(低音域)が木製のケースに弱い張力で張られている。軽いタッチ、明快な発音、倍音の豊かな音色が魅力。    

B.クリストーフォリ

Bartolomeo Cristofori(1726年の復元楽器 久保田彰製作)

ピアノの発明者クリストーフォリのピアノ。ハンマーで弦を打つ新楽器はGlavicembalo col piano e forte(弱音と強音をもつチェンバロ)と名付けられ、長い名前が短縮されて「フォルテピアノ」「ピアノ」という呼称になった。タッチによって強弱の変化や多彩な表現が可能となったクリストーフォリの発明は、現代のピアノへと継承されている基本的構造が多数。18世紀初頭のイタリアの作品は、クリストーフォリの音色によってその真価が輝く


タンゲンテンフリューゲル

Tangentenflügel(Ch.G.Schröter考案のアクションによる復元楽器 久保田彰製作)G1~e3

タンゲンテンフリューゲルの発音の仕組みは、キーの後方の加速レバーにのった木片を飛ばして弦を打ち、自然落下させるというシンプルなもの。タッチによって強弱もつけられ美しい音色が魅力。モーツァルトがザルツブルク時代に弾いていたことでも知られる。

J.ブロードウッド

J.Broadwood製作のスクエア・ピアノ1814年製 F1~c4

イギリスを代表する製作家。ハイドン、ベートーヴェン、クレメンティ、ショパンなどに愛用された。スクエアピアノは19世紀初頭のフォルテピアノ普及に大きく貢献。

クラヴィコード

Ch.G.Hubert(1770年代製の復元楽器 深町研太製作)F1~f3

キーの後端についているタンジェント(真鍮片)が弦をたたいて音を出し、キーを押している間は弦を押し上げたままになるので、ヴィブラート(ベーブング)をかけることができる。絶対音量は小さいが、表現力の豊かな楽器。繊細なニュアンスを生む良いタッチ習得にも最適。


クラヴィシンバルム

打弦タイプのクラヴィシンバルム(久保田彰製作)c~c3    

15世紀ズヴォレのアルノーの記述図を元に、詳細については久保田彰氏の想像と経験で補い製作した楽器。当時、本当に製作されていたとしたら、ピアノの最も古い祖先となる。



第1回会期中に行われたコンサート

会期中に6つの楽器を使用して有料、無料の計4つのコンサートが〈多目的ルーム〉で催されました。

親しみやすいトークつきコンサートで、一般の方にも身近にフォルテピアノを聴いて感じていただきました。

第1回  オープニング・コンサート

演奏:小倉貴久子

2018年7月20日(金)11:00~12:00

入場料:2,000円

使用楽器:A.ヴァルター、J.L.デュルケン、クラヴィコード

〔デュルケンで〕

J.ハイドン 1732-1809:クラヴィーアソナタ ニ長調 Hob.XVI:37より第1楽章

W.A.モーツァルト 1756-1791:クラヴィーアソナタ イ長調 K.331《トルコ行進曲付き》

 

〔クラヴィコードで〕

C.Ph.E.バッハ 1714-1788:「わがジルバーマン・クラヴィーアとの別れのロンド」 ホ短調 Wq.66 (H.272)

 

〔ヴァルターで〕

L.v.ベートーヴェン 1770-1827:クラヴィーアソナタ「幻想曲風ソナタ」嬰ハ短調 作品27-2《月光》

第2回 ランチタイムコンサート

演奏:毛利美智子、加藤美季(フォルテピアノ)、圓谷俊貴(テノール)

2018年7月21日(土)13:15~13:45

入場無料

使用楽器:ブロードウッド製スクエアピアノ

J.C.バッハ 1735-1782:クラヴィーアソナタ イ長調 作品17-5 (毛利)

G.F.ピント 1785-1806:グランドソナタ ハ短調
 (加藤)

  歌曲「自然への祈り」「羊飼いは清らかなニンフを愛した」(圓谷&毛利)

J.ハイドン 1732-1809:歌曲「船乗りの歌」(圓谷&毛利)

第3回 我こそがピアノの発明者!コンサート

演奏:小倉貴久子 お話:久保田彰

2018年7月21日(土)17:30~18:30

入場料:2,000円

使用楽器:クリストーフォリ、タンゲンテンフリューゲル、クラヴィシンバルム

〔クリストーフォリで〕

D.スカルラッティ 1685-1757:ソナタ ニ短調 K.1

L.M.ジュスティーニ 1685-1743:チェンバロ・ディ・ピアノ・エ・フォルテすなわち、

   いわゆる小さなハンマー付きチェンバロのためのソナタ ホ短調 作品1-4

G.F.ヘンデル 1685-1759:クラヴサンのための組曲集より 

   エアとヴァリエーション ホ長調《調子の良い鍛冶屋》

 

〔クラヴィシンバルムで〕

「ファエンツァ写本」より

 

〔タンゲンテンフリューゲルで〕

J.S.バッハ 1685-1750:平均律クラヴィーア曲集第1巻より

      第1番プレリュードとフーガ ハ長調 BWV846

W.A.モーツァルト 1756-1791:クラヴィーアソナタ 変ホ長調 K.282

第4回 受講生コンサート

8名の受講生によるコンサート

2018年7月22日(日)17:00~18:30

入場無料

使用楽器:ヴァルター、クリストーフォリ、タンゲンテンフリューゲル

J.ハイドン 1732-1809:クラヴィーア・ソナタ ト長調 Hob.ⅩⅥ:27

 

L.M.ジュスティーニ1685-1743:チェンバロ・ディ・ピアノ・エ・フォルテすなわち、いわゆる小さなハンマー付きチェンバロのためのソナタ ハ短調 作品1-2

 

W.A.モーツァルト 1756-1791:ロンド イ短調 K.511

 

J.S.バッハ 1685-1750:半音階的幻想曲とフーガ BWV903

 

J.ハイドン 1732-1809:ソナタ ト長調 作品30-5 Hob.ⅩⅥ:39

 

D.スカルラッティ 1685-1757:ソナタ K.213、ソナタ K.215

 

J.S.バッハ 1685-1750:半音階的幻想曲とフーガ BWV903

 

J.ハイドン 1732-1809:ソナタ ニ長調 Hob.ⅩⅥ:37


第1回アカデミーの様子が《音楽の友》で紹介されました!

《音楽の友》2018年9月号のRondoの1ページを割いて〈フォルテピアノが大集合〉というタイトルで〈第1回フォルテピアノ・アカデミーSACLA〉の模様がレポートされました。

7台の楽器のパノラマ写真、体験コーナーの模様、ヴァルターの膝レバーの写真。そして、当アカデミーの概要と意義について詳しく書かれています。


第1回アカデミーのリーフレット

〈第1回フォルテピアノ・アカデミー SACLA〉のリーフレット〔表〕

〈第1回フォルテピアノ・アカデミー SACLA〉のリーフレット〔裏〕