7月22〜24日、ピアニスト・小倉貴久子プロデュースによる「第4回フォルテピアノ・アカデミーSACLA」がさいたま市プラザウエストで行われた。ゲスト講師は、第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールで第2位に輝いた川口成彦。さまざまなタイプの打弦鍵盤楽器11台をそろえ、大幅に規模を拡大しての開催だ。
小倉と川口が講師を務める公開レッスンでは、ピアノを発明したクリストーフォリの楽器(1726)、古典派時代のウィーン製ヴァルター(1795)、英国ブロードウッド製スクエアピアノ(1814)、そしてピアノとは発音機構が異なるタンゲンテンフリューゲルやクラヴィコードなどが用いられた。ふだんは指導の機会があまりないという川口だが、基本的なタッチの練習法をはじめ、拍感の重要性、柔軟で自在なアーティキュレーション、装飾音の表情、ppの手触り、演劇的表現など、ピリオド楽器演奏の醍醐味を、想像力あふれる身振りと言葉で受講生に伝えた。
川口は、東京藝術大学に通っていた時代に小倉からフォルテピアノの手ほどきを受けた。「僕が20歳のとき、初めてフォルテピアノに触れたときの経験は忘れられません。それは新しい世界が開く瞬間、ゼロが1になるステップでした」。今回のアカデミーで初めてピリオド楽器に触れ、驚きや戸惑いを見せる受講生の姿に、かつての自分を重ね合わせたという。最終日の小倉と川口のデュオコンサートは、まさに「モーツァルトと弟子」を思わせる熱演で客席を沸かせた。
取材・文=工藤啓子氏
主催:メヌエット・デア・フリューゲル
Eメール mdf-ks@piano.zaq.jp
共催:Ohtagakki Fortepiano、公益財団法人 さいたま市文化振興事業団
協力:久保田チェンバロ工房、新井千笑、原クラヴィーア工房
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